ムーニャ=モニカ
 ついにアレキーパ。
ここはチチカカ湖から西へ飛行機で30分。気候は温暖で保養地としていろいろな人たちが集まってくる。白い大理石が多く産出されるため「白い街」ともいわれている。
「まあここはとにかくのんびりしよう。」
着いたホテルの点検をしながら、見事な意見の一致。ペルーに着いて14日目。
毎日毎日が、驚き桃の木であった。アレキーパを最終日程に組んだのもそんなことを予想してひと休みのつもりだった。
 しかし私達は少しも休めなかった。それはムーニャ=モニカのせいだった。彼女は23歳、典型的なメスティーソの美人である。メスティーソとはスペイン人とインディオの混血のことである。空港で私達を迎えたその彼女の第一声はいきなりスペイン語。
さらに私達がスペイン語はどうもだめだと分かると今度は恐ろしいスペインなまりの英語で話しかけてきた。それがまたとても速いのだ。
(おしゃべり娘というのは英語でなんというのだろう)
役にも立たないことを考えながら、しばし我ら二人、気が滅入ってしまったのである。ホテルはホテルで水は出ない、お湯はぬるま湯、タオルは一人分しかない。そのことでフロントに文句を言いに行ったりしたのだ。ラジオをつければ、スペイン語特有の連続巻き舌絶叫放送をやっている。私達は我らの思いをどうもうまく伝えられず、自分たち自身に腹を立てていたのかもしれない。
だからその夜、ふたりは赤ワインを傾けながら今までの8年余りのつきあいを振り返り、どちらかが先に死んだら必ず墓参りをすると固く誓い合ったのだ。
 翌日、モニカに案内されてサンタカタリーナ修道院を見て回った。ここの空の色はチチカカ湖とはまた違って明るいコバルトブルーだ。中世のスペインの街を歩いている気さえした。
 私達がモニカになれたのか、モニカが私達になれたのか、今日は彼女の言っていることがよく分かった。遠くにミスティー山が見える。ペルー富士といわれている山でたいへん形がいい。
「あなた方はとてもラッキーだ。」
例のスペイン語なまりの英語で言った。私達が乗る飛行機が予定通り飛ぶというのだ。
「ペルーにも予定通りということがあるのか....」
私達は、素直に自分たちの幸運にうなづいた。